じゃれ合う、白い波










揺れる白いシーツの波の中で・・・。

ふわふわと心地良い眠りから目が覚めた。

うっすらと瞳を開けると深い深いブルーが広がる。

そして心地よく爽やかで甘い香り・・・。

瞳を閉じていてもいっぱいに包まれていた大好きな香り。


胸いっぱいに吸い込んで心地よい重みをしっかりと身体に受け止める。

そう・・・。


白いシーツの海で。

何度も何度も熱い波に2人飲み込まれながら・・・。

流されて、流されて

溺れきってしまいそうになる。


互いに離れないように。

溺れきってしまわないように。

手を取りあって、身体をしっかりと繋げあって・・・。

同じ場所に流れつくように。

何度も、何度も、熱い身体を重ねあった。


そして愛しい想いをその瞳と瞳で確かめ合って。

優しく、そして激しく。

柔らかく暖かな唇を熱く重ねて。

何度も、何度も、絡めあった。


そして・・・。


くすり、と思わず笑みが零れる。


「重たいよ、蓮くん・・・」


そう。

ぐったりと私の体にその重みを預けるように。

愛し合って意識を飛ばした時のまま。

覆いかぶさり抱きしめる暖かな身体を。

しっかりと抱きしめてその柔らかくさらさらと流れる

青い髪を指先で心地よく梳きながら。

閉じられた瞳を縁取る長い睫毛に掠められながら。

その耳元にそっと囁く。


心地よい重み。

男の人だなって感じる爽やかだけど少し混じる汗の匂い。

抱かれた時に感じるドキドキがまたよみがえる。

こうして安心したように私の身体を抱きしめて。

覆いかぶさったままのあなたの身体が心地よい重みなのは。

なぜなんだろう。


それはきっと全身全霊かけて私に向かって情熱を注いでくれるから。

いつもまっすぐ想いを向けてくれる。精一杯の・・・。

力を抜くことなんて知らない、そんな人だから・・・。

いつもこうしてぐったりと疲れきった体を私に預けてくれる。

そんなあなたを受け止めることが幸せで、嬉しい。


そして重ねたままの唇・・・。

息が苦しくて起きてしまうことだってあるけれど。

無我夢中で私を求めてくれるあなたが

愛しくて、そして嬉しい。


私の方から離してしまった唇を求めるように蓮くんの眉が少し顰められて

少し尖らせた唇が空を彷徨う。

かわいい・・・。

そんな風に見つめていたら瞳は閉じているのに。

頬に触れて・・・安心したように探し当てた私の唇に重ねてきた唇。

暖かい・・・。

そしてさっきさんざん重ねて絡めた舌先がゆっくりとまた絡めてくる。

ちゅっと甘い水音が耳に響いて蓮くんとの甘いキスの味とともに

私の身体にまた熱を灯す・・・。


久しぷりに重ねたからあまりに重ねすぎてしまって。

少し腫れてしまってる唇・・・。



でも・・・。

いやじゃない。

心地よい痺れが甘い疼きとなって。

また熱を灯す。


夢の中で。

また私を求めてくれているの?


そんな風に思うほど瞳を閉じたままで激しく押し当てられた唇。

何度も何度も角度を変えて。

重ねられる唇。

絡められる舌先。


「んっ・・・・」


また。

甘く声が零れてしまう。


そして抱きしめられたままの身体が。

ますます熱くなって・・・。


「蓮くん・・・好きよ」


耳元でもう一度囁くように名前を呼ぶと。

目の前の琥珀色の瞳がゆっくりと開かれた。


「香穂子・・・?」

「起きたの?」


少し寝ぼけたようなあなたの瞳が色っぽい。


「あ・・・すまない・・・」


寝ぼけながら私の身体に重ねたままで

キスを繰り返していたことに気づいて。

あなたがあわてて頬染めながら乱れた髪を掻きあげながら。

私の身体の上からその熱くなった身体をのけようとする。


「そのままでいて・・・」

「香穂子・・・」


離れていこうとする身体をしっかりと抱きしめて

甘えるように見上げてお願いすると

嬉しそうに琥珀色の瞳がそっと近づいてくる。


「重くはないか?」

「うん。重いよ」

「じゃあ・・・」

「ううん。心地よい重みなの・・・。のかないで」

「わかった・・・」


目の前のあなたの瞳が少し細められて。

甘く幸せそうに揺らめいた。


そしてあなたの視線が私の唇にうつされる。

驚いたように見開かれてそっとその指先が

私の唇に伸びると優しくなぜるように触れてきた。


「少し・・・腫れてしまったみたいだ・・・。すまない・・・重ねすぎた・・・」


心配そうに見つめるあなたの唇に。

今度は私からそっと唇を合わせてゆく。


「だいじょうぶだよ・・・すごく、すごく甘いもの。痛くないの」

「本当に?」


うん、と大きくうなずくと。

今度はそっと優しくキスが降ってきた。


だいじょうぶ。

甘い痺れだから。

あなたに激しく求められた。

嬉しい証だから。

そして私があなたを強く求めた証でもあるから。


「大好き・・・。あなたもあなたのキスも大好き、蓮くん」

「俺も君が好きだよ・・・君を愛してる・・・そして君の唇も・・・」


あなたの美しい琥珀の瞳が艶めいた光を灯し睫毛と睫毛が触れそうに近い。


そして・・・。

ほんとは知ってる。

あなたの唇も少し腫れてること。


だから・・・。


「私も・・・ごめんね。蓮くんも腫れちゃった・・・」


私もあなたの唇を指でそっと癒すようになでると

くすぐったそうにあなたが目を細めた。


「いいんだ・・・。君にキスしたいのは俺の方だから・・・。

そして・・・できればもっと・・・君からのキスがほしい・・・」


はにかんだように優しくあなたが微笑んで。

私も恥ずかしくなって微笑み返す。


そして再びに抱き合いシーツの波に溺れてゆく。

じゃれ合うように。

シーツの白い波の中に。


大好きなあなたと・・・。